Kiyosumi-Shirakawa

2017.07.09

日の当たる場所を数分歩くだけで汗が噴き出る、よりによってそんな日に清澄白河をぶらつく。

 

田河水泡さんの「のらくろ」がいるアーケード商店街を歩いていると、昔ながらの駄菓子屋に遭遇した。頻繁に小学生らしきキッズが出入りしている。店先にあった懐かしの10円ゲームを端から順番にやってみる。コツは今でも覚えている。妻は20円券を1枚ゲットした。店内も一通り回って、さっきの20円券と少しの小銭で駄菓子を買った。

 

駄菓子屋の隣の隣あたりに古本屋があった。妻は立ち止まり、腕を後ろに組んで、外に陳列されている古本をじっくりと物色しだした。どうやら妻は、知らない街で出会う古本屋がどうしても気になるらしい。先日千駄木に行った時も古本屋に食いついて、埃臭い古本を何冊か購入していた。今日も難しそうな、いかにも読まなそうな本を抱えて店内に入っていった。本人は「買ったやつはちゃんと読んでいる!」と語気鋭くアピールする。

 

古本屋を出て、商店街から離れ適当に歩く。15分ほど歩いた後、妻が汗だくの顔で「ダメだ、帰ろう。」と言うので、まあ本当に暑いし、けど駄菓子屋と古本屋しか見てないなあと思いつつも「帰るかね。」ということで駅に向かう。

 

なんだか随分と古い、趣のある建物が大通りに面して建っていた。一階には今風のカフェが入っている。二階以上は賃貸のようだ。二階に上がる階段が等間隔で複数並んであり、1階の踊り場や壁には小さいタイルで綺麗に装飾されていた。階段の入り口には数字とイ、ロ、ハなどのカタカナがそれぞれに割り振られていた。自分は建物の魅力に吸い寄せられるように二階へと上っていった。本当は部外者立ち入り禁止なのだろうと思いながらも、ゆっくりと上るとそこは想像を上回る昭和初期が漂っていた。なんと部屋の扉は鉄ではなく木の引き戸だった。あまりに圧倒されしまって写真を少し撮ってしまった。こんなところに住んでみたいものだ。下に降り、改めて建物を見上げると「清洲寮」とあった。あとで調べてみると清洲寮は戦前に建てられた今でも人気の物件らしい。

 

駅の近くでかき氷の旗が揺れている店があった。店の女将さんに「かき氷、やってますか?」と尋ねると「あの、ウチさ、いちご練乳しかないのよ。いい?でもね、こっからすぐの、ほらあそこに見える看板を左に曲がったところにね、天然氷を使った有名な氷屋があるのよ。しかもそっちのかき氷はウチより安くて100円。うちはほら、製氷機なのよ。ほら、いちご練乳しかないでしょ。あっちに行けば味もいろいろと選べるし。でも、あそこも有名になっちゃったから並ぶかもね。で、もし並ぶのが嫌で今すぐ食べたいというのであれば作るけど、、、。私、正直だからあっちの氷を紹介しちゃうのよ。みんなにね。うちはほら、製氷機の氷なのよ。」とかなり早口でまくしたてられた。そこまで言われると、、、ということで女将さんに礼を言い、その氷屋に向かう。教えてくれた通りに行くと噂の氷屋はすぐに見つかった。確かに並んでいるが待てない人数ではない。暑かったが、とりあえず並んだ。20分ぐらいでかき氷にありつけた。確かに100円で氷も美味しい。妻はみぞれといちご。自分はコーラとレモンのシロップを選んだ。あっという間に食べきってしまった。

 

汗が少し引いたのを感じつつ駅に向かう。妻に「どうする?」と聞くと「やっぱり女将さんのところに戻ったほうがいいよね。なんだかこのまま帰ってしまうのは気がひける。」同感だ。

 

「戻ってきました!」というと女将さんは「あら、ありがとうね。こういうことがあると嬉しくなっちゃうわ。」とまた早口で言った。お赤飯が売り切れだったので、お稲荷さんと餡蜜を買って、地下鉄の階段を降りた。